「iDeCoが改正されたけどなにが変更されたのかな?」
「制度の改正はいつから始まるの?」
iDeCoは、自分で老後資金を積み立てる個人型年金制度です。毎月の掛金を設定し、運用することで節税しながら老後の資産形成ができる点が大きな特徴です。
iDeCoが変更されると耳にしたけれど、実際にどのような改正が行われたか分からない人も多いのではないでしょうか。
本記事では、制度改正による3つの変更点に加え、iDeCoを活用するメリットやデメリットについても詳しく解説します。
この記事を読むことで、iDeCoへの理解を深め、ご自身にとって必要かどうかの判断に役立ててください。
iDeCo改正による3つの変更点

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、これまで複数回の制度改正が行われてきました。2025年に成立した年金制度改正法と令和7年度税制改正では、以下の3つのポイントが変わります。
- 拠出限度額が引き上げられた
- 受取時の税制が見直された
- 加入可能年齢が70歳未満まで延長された
ここではiDeCo改正による変更点について詳しく説明します。
拠出限度額が引き上げられた
令和7年度の税制改正では、職業区分ごとの拠出限度額が引き上げられました。
改正前と改正後の金額をまとめた図はこちらです。

たとえば、会社員で企業年金がある人の場合、月2万円から約3倍の月6.2万円まで積み立てることが可能になりました。掛金を上限額まで設定すると、その分所得控除の対象となる金額が増えて結果として税負担の軽減につながります。
自営業や会社員など、勤務形態によって掛金上限額が異なるため、自分がどの区分に当てはまるか確認しておきましょう。
出典:厚生労働省「令和7年度 税制改正の概要(厚生労働省関係)」
受取時の税制が見直された
iDeCoと会社の退職金、両方を受け取る場合の税制が令和7年度税制改正により見直されます。これは5年ルールと呼ばれていた期間が10年に延ばされる内容です。
以前は、iDeCoを60歳で受け取り5年後の65歳で会社の退職金をもらえば、両方に税制優遇が適用されました。
改正により60歳でiDeCoを受け取ると、会社の退職金で優遇を最大限受けるには70歳まで待つ必要があります。
将来の受け取り方に影響するため、制度の理解を深めておきましょう。
加入可能年齢が70歳未満まで延長された
年金制度改正法の成立により、iDeCoの加入可能年齢が現行の65歳未満から70歳未満まで延長されることになりました。
少子高齢化が進むなかで、働き方が多様化し、定年延長や再雇用で65歳を過ぎても働き続ける人が増えています。現役期間の長期化に合わせて、働く世代が長く老後資金を準備できるように加入年齢の上限を引き上げる制度改正が行われました。
再雇用された会社員や自営業で働き続ける人も、改正後は70歳未満までiDeCoに加入して積み立てることが可能になります。ただし、すでにiDeCoや公的年金の老齢給付金を受け取っている人は対象外となる予定です。
この改正によって、60代後半でも自分のペースで老後資金を準備できるようになります。
年金制度改正法と令和7年度税制改正の施行はいつから?

今回紹介しているiDeCoの改正は、2026年4月から順次スタートし、2027年から本格的に拡充される予定です。確定拠出年金(企業型DC・iDeCo)を含む私的年金制度は、段階的な施行スケジュールが設定されています。
年金制度の改正は、成立 → 公布 → 施行という流れで進みます。iDeCoもその流れに沿っており、改正法が2025年6月13日に国会で成立し、6月20日に公布されました。
厚生労働省の資料や令和7年度税制改正の大綱によると、主な改正スケジュールは以下のとおりです。
| 改正項目 | 対象 | 施行・実施時期(予定) |
|---|---|---|
| 受取時の税制見直し | iDeCoや退職一時金を受け取る方 | 2026年1月1日〜 |
| iDeCo・企業型DC拠出限度額の引上げ | iDeCo・企業年金加入者 | 2027年の控除分から予定 |
| iDeCoの加入可能年齢の引上げ | iDeCo加入者 | 2027年から予定 |
iDeCoの改正は一度にすべて変わるわけではなく、段階的に実施される点がポイントです。
これからiDeCoを始める人は、どの部分がいつから施行されるかを知っておくことで、制度をより有利に活用できるでしょう。
出典:厚生労働省「私的年金制度の主な改正事項の施行スケジュール(2025年7月時点)」
iDeCoを活用するメリット

iDeCoを活用することで税制面で大きな魅力があります。
主なメリットは以下のとおりです。
- 掛金が全額所得控除になる
- 運用益が非課税になる
- 受け取るときにも控除がある
iDeCoを活用するメリットについて詳しく見ていきましょう。
掛金が全額所得控除になる
iDeCoのメリットとして、掛金の全額が所得控除になる点があります。iDeCoに積み立てたお金には税金がかからなくなるため、毎年払っている所得税や住民税が安くなります。
なぜなら、iDeCoの掛金は小規模企業共済等掛金控除の対象になり、支払った金額の全額が課税所得から差し引かれるからです。
所得税率10%、住民税率10%の方が毎月1万円(年間12万円)をiDeCoに積み立てた場合を見てみましょう。
計算式:年間の掛金 12万円 ×(所得税率10% + 住民税率10%)= 2.4万円
なんと、年間で2.4万円も税負担が軽くなります。
iDeCoは、月1万円という無理のない金額からでも、目に見える節税効果があります。節税額は、年収や家族構成によって変わりますのでよく確認をしてみてください。
運用益が非課税になる
iDeCoには、投資で得た利益に税金がかからないメリットがあります。
通常の投資では利益の約20%が税金で引かれてしまいますが、iDeCoなら税金がかかりません。また、増えたお金を全額そのまま運用に回るため、利息が利息を生む複利の力を最大限に活かせます。
たとえば、通常の投資で10万円の利益が出たとします。通常なら約2万円が税金として引かれ手元に残るのは約8万円です。しかしiDeCoでは、10万円の利益に税金がかからずそのまま再投資できるため、複利効果を活かすことができます。
運用益を非課税にできるiDeCoは、時間をかけて確実に老後資金を増やしたい人に適した制度といえるでしょう。
受け取るときにも控除がある
iDeCoは、受け取るときにも税金が安くなる仕組みがあり、これにより老後の資金をできるだけ減らさずに受け取れます。
iDeCoのお金は受け取り方によって特別な控除が使えるからです。年金形式で少しずつ受け取る場合は公的年金等控除が使えます。一括で受け取る場合は退職金控除が使え、どちらも一定額まで税金がかかりません。
一括で受け取るときは、退職金と同じように扱われ、退職所得控除が適用されます。iDeCoを続けた年数によって税金がかからない金額が決まります。
- 10年間続けた人→400万円まで税金なし
- 20年間続けた人→800万円まで税金なし
- 30年間続けた人→1,500万円まで税金なし
長く続けるほど、税金を払わずに受け取れる金額が増えていくのです。
積立時だけでなく受け取り時にも税制優遇があるため、老後資金を賢く増やせるメリットがあります。
iDeCoのデメリット

iDeCoには節税できるメリットがありますがデメリットも存在します。
iDeCoのデメリットは以下のとおりです。
- 原則60歳まで引き出せない
- 途中解約できない
- 手数料がかかる
ここでは、iDeCoのデメリットについてご紹介します。
原則60歳まで引き出せない
iDeCoは原則60歳になるまで資産を引き出すことができません。
iDeCoは老後資金の形成を目的とした年金制度のため、法律により中途解約や引き出しが厳格に制限されています。
住宅購入の頭金や子どもの教育費など、急にお金が必要になった場合でもiDeCoの資産は使えません。定期預金や一般的なNISAのように、ライフイベントに応じた柔軟な引き出しができない点は大きな制約です。
短期的な出費への備えには不向きなので、加入前に生活防衛資金を確保し、無理のない掛金設定を行うことが重要です。
途中解約ができない
iDeCoは原則として途中で解約して資産を戻すことはできません。
簡単に解約できると税制優遇を受けながら老後資金を確保するという制度趣旨が損なわれるためです。iDeCoは確定拠出年金法に基づく制度であり、老後資金の形成が目的のため加入後は自由に途中解約することができません。
掛金の支払いが苦しいといった理由では解約できません。例外として厳しい条件をすべて満たした場合のみ、脱退一時金を受け取れる可能性があります。
途中解約ができないので長期運用を前提に、無理のない掛金額で始めることが重要です。
手数料がかかる
iDeCoは税金が安くなるのが魅力ですが、手数料がかかるため少額の積立だとメリットが薄れる点に注意が必要です。
具体的には加入時や毎月、給付時など各種手数料がかかります。
加入時に2,829円、運用中は毎月171円(国民年金基金連合会105円+信託銀行66円)の固定費用が必要です。さらに、金融機関によっては運営管理手数料が発生します。
iDeCoで着実に資産を増やすには、節税効果や運用益だけでなく、運営管理手数料が少ない金融機関選びが大切になってきます。
まとめ iDeCo改正をチャンスに資産形成を始めよう
今回は、iDeCo制度改正による3つの変更点とiDeCoのメリット、デメリットについて説明しました。
2026年から順次施行される改正では、iDeCoがより活用しやすくなる一方、受取時の税制見直しには注意が必要です。
掛金の全額所得控除や運用益非課税など税制メリットは大きいですが、60歳まで引き出せない点や手数料がかかる点には注意が必要です。
今回の制度改正は資産形成の選択肢を広げるチャンスです。自分のライフプランに合わせて、iDeCoの活用を検討してみてはいかがでしょうか。

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